こんにちは。代表の稲田です。
先日、米国ミシガン州クランブルックの
海外日本庭園再生プロジェクト に参加してきました。
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このプロジェクトは、平成30年度、全体6カ所うち米国4カ所、
・イリノイ州シカゴ市ジャクソンパーク日本庭園
・ミシガン州クランブルック・ハウス・アンド・ガーデンズ日本庭園
・ペンシルベニア州フィラデルフィア市フェアマウント公園松風荘庭園
・カリフォルニア州リバーザイド市結心庭日本庭園
その他、
・イギリス ウェールズ国立植物園日本庭園
・チェコ プラハ市植物園日本庭園
で実施される予定。
そして今回、寺下親方(㈱近江庭園会長)を筆頭に
香川県の今田リーダー(今田作庭園社長)をはじめ
全国から4人の庭師が選抜され、
チームクランブルックが生まれました。
・岡山県の青江さん(㈱青江造園土木)
・岩手県の千田さん(衣川造園)
・東京都の大澤さん(㈲大沢造園)
・群馬の稲田(作庭志 稲田)
私はあくまで庭師の一人としてですが、
このプロジェクトに参加した理由があります。
それは、
「外国人からみた日本庭園はどのように見えるのか?」
を知りたい。
そして、もう一つ
「私自身が海外で日本庭園を作りたい」
という夢があり、参加させて頂きました。
クランブルック1日目、現場の下見です。
こちらがクランブルック・ハウス・アンド・ガーデンズ日本庭園
ここクランブルックは日本から緯度で追っていくと、北海道と同じ程の
位置にあり、この時期は朝晩が寒く、日中は割と温かい。これから紅葉
を迎えるような季節で、町全体がとても開放的で景色も良く、気持ちの
よい環境でした。
そして、今回庭園再生する場所は、先ほどの写真の池に注がれる
水流れの部分。完全に流れが泥で埋まっています。
2日目からは作業に入り、解体・既存木剪定・位置だし・鋤取り・
造成・橋石組・滝石組み・護岸石据え・飛石・州浜・植栽・仕上げ
作業日数6日間という短い期間ではありましたが、クランブルック
の庭師の方々と共に汗を流しました。
現地の方々も、本当に一生懸命内容を理解しようとしてくれて、
何をしたらいいのか?道具は何が必要なのか?言葉が通じない中でも、
阿吽の呼吸で、とてもいい流れでの作業でした。
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施工5日目にはクランブルックで造園業を営み日本庭園を手掛ける
庭師トビーが飛び入りでボランティアとして参加し、共に汗を流し
ました。その後、トビーに夕食へ招かれこんな会話になりました。
真剣な眼差しのトビー
「 日本庭園とはどういうもののことを言うのか?
どうしたら日本庭園と呼ぶのでしょうか?
私はそんなことを良く考えています。」
寺下親方は次のように答えてらっしゃいました。
「 日本人は四季の応用が上手い。
それは衣食住をみても言えることで、食材にしても、
住まいにしても、それを上手く利用したものをつくる。
自然でも同じ。四季という自然を受け入れ、
それを利用して庭を表現する。
そして、その景色を室内から窓越しに静かに眺める。
そんな習慣が日本には古くからあるんですよ。
周りと溶け込んだ庭をつくる・・・」
生活の中で四季を感じ愉しめる庭
この会話を聞き、なぜかすごく嬉しくなりました。
外国の庭師がこんなにも真剣に日本庭園と向き合っている。
日本の仲間で集まっても中々このような話題にはなりません。
つまり、ここに集まった現地の人達は、
「日本庭園を理解しようとしている。」
日本人というDNAはなくとも、それを探求している。
人は人を理解しようとするとき、人を受け入れているのだと
思います。きっと庭もまた同じで、承認することで本質を
感じることが出来るのではないでしょうか?
もちろん文化というバックボーンの中で、
疑ってみることも大切だとは思いますが・・・
私は内心、もののあわれみや、未完の美、作っては壊す
ものづくりの美、このような見えないものを美とするのは
日本だけのものかと思っていました。
しかし、少なくとも私が現地で知り合った方々はそれを
感じていた。感じようとしていました。
庭園再生中のお披露目会では、見え方は違えども現地の方々は
とても感動してくれて、「Beautiful・Amazing」など、
たくさんの感動の声が・・・
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いずれにしても、
寺下親方の持つ日本の美の感覚は世界に通じるもの
だと感じました。
と同時に、日本庭園の美を受け入れてもらうことも大切で、
日本庭園をつくった我々だけが偉いのではなく、
それを受け入れてくる人たちに私は心から感動しました。
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今回、現地庭師の方々と、言葉は通じなくても同じ目的・
技術をもってすれば心で通じ合うことができました。
このことでさらに庭師という仕事を誇りに感じることが
できました。
この経験はこれからの私の人生において、宝になります。
最後に一緒に庭をつくったクランブルックの仲間たちに
プレゼントを贈りました。日本のメンバーがそれぞれ
愛用している鋏やナタ・道具入れや掃除道具、手ぬぐい
シャツなどを贈り、
私は、「これからこの庭を私たちの想いも継いで頼んだよ!」
との思いを込めて袢纏を渡すと、最高に喜んでもらえました。
「これは私の大切な部屋に飾らせてもらうよ!」と
本当は、これを着て管理してほしかったのですが・・・
とにかく喜んでもらえてよかった!
これからは、私自身がより一層成長し、造園界の発展の
ために、微力ながら貢献できれば幸いです。
このような機会を下さいました関係各所の方々には、
心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
稲田 裕佳